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​修繕計画(案)の策定(長期・中期・短期)

お財布は一緒でも使い道が違う「管理費」と「修繕積立金」

  毎月銀行の口座から引き落とされる管理費と修繕積立金、一緒に引き落とされるので、使い道が

  同じと思われている区分所有者の方もいると思いますが、家計に例えると管理費は「生活費」であり、

  修繕積立金は修繕に備える「預貯金」にあたります。

 

   

マンション(区分所有建物)は共用部分と専有部分に分けられます。 

 

◆専有部分と共用部分

                           

  「区分所有権の目的たる建物の部分(建物の区分所有等に関する法律。以下「区分所有法」という)」と

 規定されています。

 「区分所有権」 とは一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は

 倉庫その他建物としての用途に供することができるものであってそれぞれ個別の所有権の目的とされる

 もので分譲マンションの各室などがこれにあたります。

    法定共用部分:区分所有法で定められた共用部分

    

    規約共用部分:マンションの管理規約で定められた共用部分、例えば、管理室や集会室など

 

  ※専有部分であっても管理組合として共同管理したほうが適切と判断した場合は共用部分と位置づけ、

   管理規約にその旨明記。 (例えば、給排水管や情報通信系統の配線など)

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修繕積立金でどこを直すの?

原則として一定周期に基づき実施される比較的大きな工事を対象 (予防保全・計画修繕)

 

  修繕計画に基づく修繕工事(計画修繕)⇒修繕積立金から支出

  日常の保守・点検、清掃及び小規模修繕 (経常修繕または普通修繕)⇒管理費から支出

   日常点検 : 管理組合や管理会社が日ごろから実施する点検で主に外観目視により点検。

   定期点検 : 関係法令に基づき「建築士」「特殊建築物調査有資格者」などの有資格者により

            実施される点検。

   定期清掃 : 清掃は廊下・階段等の共用部分に対するものと共用設備(受水槽などの給水施設に

            関するものと、専有部分を含めた排水管清掃など)に対するものがあります。

 

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長期修繕計画ってなに?

一定年数が経過すると日常の点検・修理・修繕では回復に限界が生じます。

建物や設備の種類や材料に応じて、長期修繕計画を踏まえた計画的な予防修繕(保全)が必要なります。

 

⇒長期修繕計画

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1)長期修繕計画の目的

   快適な住環境を確保し、資産価値の維持・向上を図るために長期的観点から修繕の内容、時期、費用等を

   計画するもの。

[長期的維持管理に必要な修繕]

(1)建物(建築工事) 

   外壁、屋根・屋上、鉄部・金物関係など

(2)設備機器・配管(設備工事)

   給・排水設備、ガス設備、電気設備、消防設備、エレベーター設備など

 

(3)外構・植栽

   舗装、擁壁、植栽など

長期修繕計画に基づく計画的な予防修繕(保全)の実施 

 

 ⇒ 計画的な修繕による原状の機能回復をおこなう長期修繕計画を踏まえた修繕実施計画の準備

 ⇒修繕のための組織づくり、診断の実施、資金の準備

[改修・改良等のグレードアップの必要性]

 社会環境の変化⇒新しいマンションは最新の技術、材料や設備が供給

 

 ⇒高経年マンションは使い勝手の低下・陳腐化⇒改修・改良が必要

   例えば、バリアフリー化、省エネ化、耐震性能の向上、防犯性能の向上等

[関係法令の改正への対応]

 建築当初は適法だったものが、法改正により「既存不適格建築物」に・・・・。

 

 建築確認が必要な改修工事を行う場合、建築物全体について適法となるようにすることが必要。

  例えば、耐震基準(築35年以上経過した建物)の改正

  旧耐震基準:1981(昭和56年)5月31日までの建築確認において適用された基準

   旧耐震基準:震度5強程度の揺れでも倒壊しない 

   新耐震基準:震度6強~7程度の揺れでも倒壊しない

[修繕積立金の設定及び見直し]

  ・必要修繕費に基づく必要修繕積立金の検討

  ・25年~30年間程度の長期間に必要な修繕工事の修繕積立金の算出

    原資:修繕積立金、修繕積立金基金、駐車場使用料など

    ◆国土交通省のガイドラインでは新築の場合は30年、見直し場合は「大規模修繕工事」を

     2回実施する程度とされ、概ね25年でされるのが一般的。

  ・概ね5年毎に修繕計画の見直し

  ・修繕積立金の設定または見直し案の作成と合意形成

[区分所有者の維持管理意識の向上]

  ・長期修繕計画の必要性に対する理解 ⇒ 良好な維持管理が行われる環境が形成

  ・建物・設備の劣化進行とそれに起因する不具合の発生、資産価値の低下など

   について理解を求める。

 

  ・修繕積立金や一時金徴収に対する理解

 

  ・修繕実施のための組織づくり、修繕工事費の予算化に対する理解

   修繕委員会の設置、建物調査診断、コンサルタントの導入など

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2)修繕積立金額の目安

修繕積立金の適正金額についてはマンションの規模や設備によって異なるため一概には決められません。

マンションの修繕積立金に関するガイドライン(平成23年4月 国土交通省)によると専有床面積当たりの修繕積立金の額はつぎの通りとなっています。

◆階数/建築延床面積

 

 [15階未満]

 

  5,000㎡未満         165円~250円/㎡・月  平均値 218円/㎡・月

  5,000~10,000㎡       140円~265円/㎡・月  平均値 202円/㎡・月

  10,000㎡以上                135円~220円/㎡・月  平均値 178円/㎡・月

 

 [20階以上]    

 

    170円~245円/㎡・月  平均値 206円/㎡・月

 

◆機械式駐車場がある場合の加算額 ※ 1台当たりの修繕工事費(月額)

    2段(ピット1段)昇降式           7,085円/台・月

    3段(ピット2段)昇降式           6,040円/台・月

    3段(ピット1段)昇降横行式       8,540円/台・月

    4段(ピット2段)昇降横行式     14,165円/台・月  

例:住戸専有面積 80㎡    専有面積の合計:6,000㎡   ※負担割合 80/6,000

     2段(ピット1段)昇降式が50台の場合

  7,085円/月×50台×80/6,000=4,723円

 

     202円×80㎡=16,160円+4,723円=20,883円/月

注意)修繕サイクルに基づき計画的に修繕が行われず、先送りしている場合は、将来的に大幅な

​    積立金の見直しが必要になる場合があります。

 

ポイント:修繕積立金と管理費は区分して経理。

機械式駐車場のように維持管理に多額の費用を要する場合は駐車場使用料会計等を独立した会計区分とすることが望ましい。

※マンション管理標準指針(国交省平成17年12月)

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標準修繕サイクル」にもあるように築後20年以降、建築関係での様々な金物交換や給排水設備、防災設備、電気設備やエレベーターなどの機械設備に関する修繕費が急激に増え、特に10階建以上の高層マンションにおいては20,000円/月額・戸を超えるものもあるようです。

このように築20年から30年にかけて、例えば2回目の「外壁等の大規模修繕工事(概ね12年サイクル)」に加え、給排水設備の更新やエレベーター・防災設備の更新、機械式駐車場設備の改修や更新などもっとも修繕費が必要となる時期であり、年を経るごとに修繕費が増加することは避けられません。

修繕積立金の値上げも必然的に考えなければならない状況となります。

長期修繕計画に記載されたそれぞれの修繕項目や修繕サイクル(周期)や金額はあくまでも建物の性能を維持するために必要な資金計画の「目安」であり、「見積書」ではありません。

したがって、必ずしも記載されている通りに実施しなければならないというものではありません。

 

必要な工事のなかには詳細な建物調査診断が必要なものもあります。

その結果、実施年度の前倒しが必要な工事や逆に先送りが可能な場合もあります。

また将来、修繕の方法(工法)や設備についても変わってくる可能性(技術進歩など)があります。

 

 

設備(機械設備)関係についてはすぐに生活に直結するような故障をもたらす場合もあります。

例えば、排水管に穴が開けば水は流せないし、給水ポンプが動かなければ水が使えません。

そのような事態が起こる前に予め修繕時期を予測し必要な費用を備えておく必要があります。

修繕積立金はみなさんの大切な資産を維持、向上させるために必要なものと言えます。

長期修繕計画に関するよくある質問

 1)そもそも修繕積立金はなんでいるんですか?

 

  A.マンションは複数の方か所有している「区分所有建物」です。

   建物が存在する以上、外壁や設備機器・配管のメンテナンスが必要になり、日常の保守・点検のほかに

   それでは補うことのできない工事が必要となり、それに伴い多額の工事費が必要となります。

   その際、建物全体に係る共用部分の工事費は全員で負担することが必要となりますが、それを都度徴収

   した場合、自分には関係ない、例えば屋根防水の場合、最上階に住んでいる人は直結しますが、下の階

   に住んでいる人は意識が低いとか経済的事情などによって合意形成が困難であるなどの問題が発生しま

   す。それを避けるため、また建物は所有者の共用物であることから、修繕の時期や費用を予想して持分

   比率に応じてあらかじめ積みたてておくことで、合意形成が得られやすくなります。

   工事の内容についても計画表には計上されていない改良工事やより耐久性が高い材料や工法を用いる

   ことで長期的に負担を低減できる場合もあることから余裕のある設定が必要になります。 

2)工事は計画表の記載の通り、実施しないとダメですか?

 

 A.工事の実施時期や費用はあくまでも「目安」となります。

  工事の緊急性や足場の要否などをもとに優先順位を考え、効率的に行うことが必要です。

  そのためには建物や設備の劣化診断が必要になる場合があります。

  また、特に設備関係の項目においては、急なポンプや照明器具の故障による修繕が必要になる場合が

  あります。

3)工事費は計画表に書かれている通り、必要ですか?

 

 A.1)の通り費用についても現在予想できる工事費をもとに算出した「目安」となります。

  将来、材料や工法の変化や物価上昇、税率変更などの経済的理由により見直しが必要になります。

  長期修繕計画は一般的に25年~30年間の工事費の「目安」であり、中期修繕計画は10年、

  短期は5年程度の期間を想定したものであり、期間が短ければその精度は高くなります。

  国土交通省のガイドラインでは概ね5年毎の見直しを推奨しています。

  また、計上している費用は見積ではありません。また、調査・診断の結果、作成時に予定していなかった工事

  項目が含まれたり、計画していたものが、先送りされたりする場合もありますので、工事実施の際は同一条件

  (仕様・数量)の「見積」を複数取得し比較検討することが必要になります。

4)管理会社は長期修繕計画を作ってくれないんですか?

 

 以前は標準管理委託契約書では管理会社の基幹業務として別表四に「 長期修繕計画案を作成し提出する。

 当該長期修繕計画案は、○年ごとに見直し、提出 する。」とありましたが、現在は「長期修繕計画の見直しのため、

 管理事務を実施する上で把握した劣化等の状況に基づき、当該計画の修繕工事内容、実施予定時期、工事の概

 算費用等に、改善の必要性があると判断した場合には、書面をもって助言する」「長期修繕計画案の作成業務及び

 建物・設備の劣化状況などを把握するための調査・診断を実施し、その結果に基づき行う当該計画の見直し業務を

 実施する場合は別個の契約とする。」と改正(2010年)されています。(何れも抜粋)

 以前は机上のパソコンの入力だけで作成できたものが、調査・診断が伴い専門知識が必要となったことから管理 

 会社から設計事務所などの専門家に「外注」することも多く、同時に管理組合から直接専門家に委託するケースが

 多くなっています。

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